fc2ブログ
2023-02-02

ねぶた 津軽弁講座

ねぶた祭り 里
Photo by 芽衣さん


季節外れですが、見でってけ

 

ねぶた 津軽弁講座

 

あれは四十数年前、青森の高三で熱い夏の話。延べ三百万人の跳人(ハネト)と群衆達。


ねぶた祭り


出世大太鼓、バカでっかい太鼓を前四人、後ろ四人。上から下に一人バチを叩く者、下から三人バチを叩く者、合わせて八人の優れもの達。ドン、どどっと、ドン、どどっと、ドン。

凱旋太鼓、前後合わせて六人の優れもの達。ドン、どどっと、ドン。でっかい太鼓を叩く音、音が耳の芯まで熱くなる。

 

ねぶたの坂上田村麻呂が廻る。跳人が跳ねる。群衆が拍手をおくり、

「わー、うわー」と叫ぶ。酒臭い息を吐きながら。


ねぶた祭り 刀剣

喧嘩有っての祭りの始まりだ。跳人がひたすら跳ねる。跳ね終わったら直ぐ喧嘩の準備に取り掛かる。

ギラギラと目線が誰かを探す。青森を離れて行こうとする者、ただひたすら青森にしがみつく者。ラッセラー、ラッセ、ラッセ、ラッセラー。

俺らは六人束になり、目を光らせ、鬼に金棒とはこれ如何に。四月が来ればそれぞれの道を行くのだから、それはそれで仕様が無い。

 

「なぁ、何年?」

「二年」

「わげな(若いな)」。

他校の高校生に尋ねる。

「なぁ、何年?」

「三年」

「あべ(ついて来い)」。


ねぶた祭り 鬼のお面

敵は七人いるのが分かる。裾(すそ)が足首を隠すように真っ赤なお腰(おこし)を履いて。俺らは桃色のお腰を履いて。七人が荒い顔で付いていく。

群衆が

「あぐばて、どさいげ(邪魔だ、何処かへ行ってくれ)」。

ねぶた囃子の笛や太鼓、手振り鉦(がね)。それを聞いた跳人達が跳ねる、それを観ている群衆。十三人の事など知らぬ存ぜぬ。

 

十三人ばらばらになり、喧嘩のスタートだ。

「おもへ、こすぱすね(面白い、ぐだぐだ言うな)

「きまげる(腹が立つ)

「じぐねな(意気地が無いな)

「じょっぱりのずるすけだ(強情ッ張りの悪ガキだ)

「いいきなな(いい気になるな)

「じょっぱりだばな(意地っ張りだな)」。凄い津軽弁。喧嘩が続く。

 

十三人共々パンチに力が入らない。青色吐息の一人が言う。

「おったってまる、めぐせじゃ(疲れ果てたし恥ずかしい)

「へずねし、ぬぐいし(苦しいし暑いし)」。

 

ねぶた祭り 艶女


一人ずつ道路に倒れるように座る。敵らを見る。ついさっきまで怒りの目だったのが優しくキレイな目をしている。

一人の跳人が言う。

「おめだづ、けやぐだな(お前達仲間だよ)

「喧嘩両成敗だな」

「あずましい(気持ちえぇ)

「ビールかってご(ビール買って来て)」。

帯に結んであるガガシコは日本酒を呑むなら丁度良いが、ビールを呑むなら缶で良い。

 

缶ビールをちょっと持ち上げ、

「ガンペーすよ(乾杯しよう)

「ガンペー」。

 

跳人が跳ねる。あラッセ、あラッセ、ラッセラー、ラッセラーラッセ、ラッセ、ラッセラー。

高三の短い夏が終わりを告げる。


























スポンサーサイト



コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

nayuki2416

Author:nayuki2416
失語症、
高次脳機能障害、
右片麻痺など。
在宅勤務でPC関連の仕事をしています。

懐かしいこと、
ひょうきんなこと、
爽やかなこと、
微笑ましいこと、
泣き笑いすることを、
たまには散文詩にしています。

最新記事
最新コメント
カテゴリ
カウンター
ブロとも一覧

A Cup of 俳句

空と海とウータと私

おばあちゃんのひとりごと