満面の笑顔

四十数年前の青森の話。
満面の笑顔
この時期が来れば想いだすのは、バイバイの季節。
青森の男子高でクラスメイトだった渡辺君。英語のリーダー(読本)とグラマー(文法)が大の大得意で、他の科目は赤点すれすれ。数学も物理も、ましてや体育に保健体育もほとんどダメっぽい。
渡辺君は背が小っちゃくて眼鏡をかけていた。眼鏡といってもただの眼鏡じゃなくてレンズがぶっとい。
黒板に書かれた英語のスペルもだいたい10センチ離れてノートに書き写す。肩が凝りそう。
グラマーのテスト結果を配布すると、なんだか怒った顔で先生のところへ行き「ここ違ってます。98点です、すみません」
満点を2点引かれる。黙っときゃいいのに言っちゃうんだもんな。渡辺君らしい。
高二の夏、高校の全クラス対抗球技大会が有り、「何で相撲が入ってらんず」と渡辺君に笑い声で喋ったことがある。
渡辺君は上半身裸になり下半身ジャージを捲り上げ廻しを締めている。相手はかなり大きな人で渡辺君の廻しを軽く持って、ポイと土俵の外へ。チックしょう負けたぁと言いながら、行司の人に挨拶する満面の笑顔で。三年になりクラスが一緒になった。
柔道部を辞めて突っ張っている奴や、ラグビー部を辞めておとなしくしてる奴や。渡辺君はそういう奴に声を掛ける「気にすんな」と。小っちゃな身体とぶっといレンズの眼鏡。突っ張っている奴もおとなしくしてる奴も笑い声を抑える。
渡辺君に逢いたい。「リハビリ頑張れよ」と言ってくれないかな?
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